時がとまったレトロな街カンポンバルー
再開発が進むクアラルンプール中心部。
レトロな生活感あふれるショップロットや集合住宅が取り壊され、近代的な高層建築へと変わっていきます。
その中でKLCCからLRTケラナジャヤ線でわずか1駅という立地ながら、レトロともいえる昔ながらのマレー式住宅が残り、下町情緒が感じられる場所がカンポン・バルー(Kampung Baru)。
マレー語で「新しい村(New Village)」を意味し、実際に1899年に町ができた当初はクアラルンプール市内の新しい住宅街でした。市内で最も古いとされる住宅地の1つで、今もなお人々の生活の場でもあります。
その住民の多くはマレー系の農民でした。
近くにはクアラルンプールの語源となっているクラン川とゴンバック川が流れ、農地に適していたのだそうです。
またディープな食通の街としても知られ、マレーシアの国民食ナシレマ(Nasi Lemak)は、観光客向けではなくローカル向けとなっています。
界隈を散策すると、さまざまな食べ物の匂いが漂ってきます。肉や魚を油で揚げる匂い、焦げたバナナリーフの匂いと、どこか日本の下町を思い出させるような佇まいとなっています。
クアラルンプール市内中心部は再開発が進み、表通りには高層コンドやオフィスビルが多く、世界の大都市とさほど変わらない光景が続いています。
カンポン・バルー(Kampung Baru)の町は戸建て住宅が並び、舗装されていない路地があり、情緒たっぷりな別世界となっています。クアラルンプールの箱庭のようなものなのかもしれません。
歴史的建築という観点でいうと古民家などは保存されているイメージですが、ここでは今も人が住み、生活の営みがあります。
1931年に建てられた一般住宅ルマリマス(Rumah limas)。リノベーションをされていますが、伝統的なコロニアル&マレースタイルの家です。フォとスポットではありますが、人が住む日常が感じられます。
ぎりぎりまで迫ってくる高層建築との対比が印象的です。おそらくカンポンバルーで一番有名な家!?
ケラナジャヤ線のカンポンバルー駅から北西の方向に位置するマスターマッツハウス(Master Mat’s House)は、1921年に建てられて以来、三代目の孫がそのまま住み続けています。青い壁とローカルスタイルの屋根、そして石の柱が特徴的な建築です。初代の当主はセパタクにある学校の英語の先生で、マスターマットと呼ばれていたため、それがそのまま家の愛称となったのだそうです。
この2つの住宅はよく知られていますが、近所を歩くとカンポンハウスと呼ばれるマレー式の高床住宅があちらこちらに残り、そのどれもが特別なものではなく、住民の日常生活の場となっています。
近年はそんなに物価が安くないと言われているクアラルンプール ですが、カンポン・バルー(Kampung Baru)ではまだまだそれを思わせるようなホーカーやフードストリート、マーケットが多く残っています。
年代物の圧搾機で絞るサトウキビのジュースで喉を潤し、散策してみてはいかがでしょうか。